割り箸と環境問題

割り箸は地球にやさしくない?


 現在、日本国内で使われている割り箸は年間194億膳(国民一人当たり年間150膳/平成22年林野庁調べ)。2005年の260億膳をピークに、割り箸の使用は減少傾向にあります。
 その理由の一つが、環境負荷にあります。割り箸は森林伐採につながるとして、繰り返し洗って使える樹脂箸への切り替えが進みました。
 「割り箸というと環境破壊をイメージする人がいらっしゃいます。ですが、割り箸に使われる木材は、木材全体のパーセンテージからいうと、ごくわずか。しかも、国産の割り箸の90%ちかくは、間伐材から柱や板材を切り出した残りの「端材」を使います。本来捨てられてしまう部分を割り箸として有効に活用していることが、残念ながらあまり認知されていないのです」


コスト面から見た「割り箸」

 中国産やベトナム産の割り箸は、店頭価格で1膳あたり1円前後。国産の割り箸を使えば、その価格は3倍以上になる。繰り返し使える樹脂箸は、コスト面において割り箸よりも優位性があるといえます。
 「樹脂箸への切り替えが進んだ2008年ごろ、割り箸の輸入元の97%を占める中国に木材の伐採制限ができました。結果、安価だった輸入箸の価格が上がったことも、割り箸から樹脂箸への切り替えが進んだ理由の一つでしょう」
 コストは外食企業のビジネスに直結する課題である。原油高騰による製造費への影響、洗浄などにかかる光熱費、人件費、廃棄コストなど、樹脂箸・割り箸ともに、より多角的な視点からコストをとらえなおす必要性があります。

衛生面から見た「割り箸」


 日本の割り箸の多くを輸出している中国では、いま、割り箸が見直されているつつあります。理由は、衛生問題。変化のスピードがはやい中国では、衛生観念も年々変化しており、繰り返し使う箸に対して感染のリスクを唱えるむきもあります。
 「衛生面での意識の変化は、日本人も同様にあります。最近は、割り箸の製造工程に注目する人も増えていて、海外の割り箸は漂白剤や防カビ剤、乾燥や艶だしにも薬剤を使うことも多いことから、輸入された割り箸を避けるという人もいます」
 日本では大正時代、「衛生箸」として杉の割り箸に人気が集まった時代がありました。確かに、国産の箸は杉や桧など、抗菌作用の高い木材を使うことが多いです。ここ数年で、日本での割り箸のポジションは、またひとつうねりを迎えるかもしれません。


国産割り箸と日本の森林

 日本は国土の約3分の2を森林が占める、世界でも有数の森林国です。そして、その森林の約4割は、人が木を植えて育てた人工林です。現在、戦後に作られた多くの人工林が、本格的な利用期を迎えています。しかし、資源量は年々増加しているにも関わらず、木材の利用は十分に進んでいないのが現状です。
 「木材を使うことは、伐って、使って、植えて、育てるという人工林のサイクルの一部です。木を使うことで、山の手入れが進んで森林を守ることにもつながります。その木がまた二酸化炭素(CO₂)を吸収し成長していくという、森林のサイクルが保たれ、地球温暖化の防止にもつながっているのです」
 近年では、欧州の大手カフェチェーンなどで樹脂製のストローが廃止されたニュースも記憶に新しく、グローバルにおいても、環境問題はより多様な視点から取り組まれていることがうかがえます。