日本の箸文化の精神が地球環境を守る
日本は国土の約70%が森林に覆われる自然豊かな国です。この環境は、竹や象牙(中国)、金属(韓国)とは異なる、木を活かした独自の箸文化を育んできました。特に、江戸時代から受け継がれる製法で作られる割り箸は、使い捨てである一方、木材の端材を有効利用するなど、木の命を大切にする伝統が息づいています。
しかし、近年使用される割り箸の90%以上が輸入品である現状は、環境保護の観点から批判の対象となっています。輸入割り箸は、中国の砂漠化や東南アジアの森林破壊に影響を与えているとの指摘があるため、国内産品の普及が求められています。
国内の割り箸は、主に杉、檜、蝦夷松、竹などを原料としており、建材として利用される際に発生する間伐材や端材を活用しています。この製法は、自然と調和しながら資源を大切にする日本の木の文化を今に伝えています。
また、間伐材を利用することで、健全な森林管理と環境保護にも貢献。奈良県吉野郡下市町では、吉野杉を使った割り箸が発祥し、山を大切にする地域の心が受け継がれています。
割り箸は「割るもの」だけではない
日常私たちが「箸」と口にするとき、多くは家庭用の塗り箸や外食店の樹脂箸をイメージする。しかし、古来の日本では、箸といえばすなわち割り箸でした。江戸時代に塗り箸が誕生するまでは、日本人はずっと割り箸を使ってきました。
割り箸の定義は難しいですが、弊社では「木の素地のまま」のものを割り箸としています。パチンと割り開くものに限らず、お正月の祝箸のように、バラバラになった箸が一本ずつ1対のセットになったものも、すべて割り箸と呼んでいます。
箸は、日本古来のハレとケの精神の象徴でもあるといわれています。祝い事や神事などの非日常(晴れの場)は「ハレの箸」、家庭など日常(ケは、日本古来のハレとケの精神の象徴でもあるといわれています。祝い事や神事などの非日常(晴れの場)は「ハレの箸」、家庭など日常(褻(ケ)の場)は「ケの箸」を使い分けてきたが、割り箸は、その両方の精神を兼ね備えています。
元々の箸、神と近づくための儀式で使う祭器です。特に両端が細くなった箸は、一方が神、もう一方が人用となり、神と人を結びつける意味があります。紙が使ったハレの箸は、他人が使わないように1回1回、使い捨てる。
割り箸には、そんな意味が込められています。
江戸時代に誕生した、現代の「割る」スタイル
箸の起源は正確にはわかっていません。最も古いものでは、約3400年前の中国・殷の遺跡から青銅の箸が発掘されています。その箸が日本に伝来するのは弥生時代になります。仏像や経典など共に伝わったといわれ、箸食を朝廷の儀式に採用したのは聖徳太子だとされる説が有力とされています。宮中の晩餐儀式において箸が使われるようになったことが、その後の宴会料理と食事作法に大きな影響を与え、今日の日本料理の発展の基礎になっています。
古代の日本ではU字型でピンセットのような形をした竹の折り箸、または邪気を払うという白木で造った2本のバラ箸を使っていました。精進料理が花開いた鎌倉時代、本膳料理が完成した室町時代を経て、江戸時代に入ると外食産業が発達し、庶民の胃袋を満たす飯屋があちこちに並び始めます。そこで考案された画期的な箸が、パチンと割り開く、現在の割り箸のスタイルとなりました。
木や竹の「裂ける」という特性を利用して生まれたのが割り箸です。そして、自然の木目の美しさを備えていることが、あっという間に生活文化の中に定着したということです。
かたちに込められた意味
箸は祭器から生活雑器へと発展しました。ひとつひとつのかたちに多くの願いを込めて考案されてきましたが、その意味までを知る人は年々減少しています。
弊社では、箸袋やパッケージに、その箸が持つ意味や背景をお伝えする文言を極力添えるようにしています。
見た目の美しさだけでなく文化も継承し、おもてなしの心が伝わるように努めています。
素材によって変わる、箸の「ランク」
割り箸のランクを決めるのは、まず、素材。国産の割り箸は、柳、杉、檜の3種類で、ほんのりと上品な木の香りが漂い、高い抗菌作用があります。

