魯山人との繋がり



魯山人と箸勝本店の繋がり

 北大路魯山人が愛した箸や、彼にちなんだ箸のスタイルは、単なる道具ではなく「食の美学」を体現するものでした。
 魯山人と箸勝本店は、日本の「食の美」を語る上で欠かせない深い結びつきがあります。
 彼が、その審美眼で選び抜き、生涯愛用したのが箸勝本店の箸でした。


魯山人の考える「食の美学」


 魯山人は、食とは単に料理を口にすることではなく、器、しつらえ、そして手に触れる道具に至るまでを含めた、ひとつの美の体験であると考えていました。
 その中で箸は、料理を口へと運ぶための道具であると同時に、食の印象を大きく左右する大切な存在です。手にしたときの感触、口当たりの優しさ、見た目の美しさ―そうした細やかな要素の積み重ねが、食事全体の豊かさにつながるというのが、魯山人の「食の美学」の根底にある考え方でした。



吉野杉の割り箸

 魯山人は、素材の味を最大限に引き立てるため、使い捨ての杉箸を愛用していました。特に、香りや質感の良い吉野杉などの良質な杉で作られた、
「六角箸」や「四角箸」を好み、この香りが料理の邪魔をしないことを重視しました。
 また、彼が最も愛用したのは、箸勝本店の手がける吉野杉の赤柾を使用した中央が太く両端が細い「利久箸」や、角を落とした「八角箸」でした。
 木目がまっすぐで美しく、杉特有の清々しい香りと、手に馴染む質感と、口に当てた瞬間の軽やかさが好みとされていました。


星岡茶寮の箸


 魯山人は、1925年開設の「星岡茶寮」で顧問兼料理長を務め、料理だけでなく食器や備品の吟味・手配までにこだわり、「食」とそれを支える道具としてではなく全体の美意識に基づいて杉箸を使われていました。
 そこでは客人に供する箸として、箸勝本店の杉箸が選ばれ使われていました。



箸置き(箸枕)

 彼は箸そのものだけでなく、箸を置く「箸枕(箸置き)」にも異常なほどのこだわりを見せ、特に、彼が考案したとされる「ふっくらとした鯛の形」や「鳥の形」をした鉄絵の箸置きなどが有名です。


魯山人の愛した「究極の消耗品」


 箸は、毎日の食事の中で使われ、その役目を終えれば新しいものへと替えられていくものです。
魯山人は、そうした箸にこそ、究極の清潔感と機能美を見出し、それを最高級の贅沢と考えました。
 いわば箸は、食の場における“究極の消耗品”です。
しかし、すぐに使い終えるものであっても決して粗末にせず、短い時間だからこそ、心地よさや品格を大切にすることが、食をより豊かにすると魯山人は考えていたのです。



おもてなしの精神

 千利休が客人のためにその都度箸を削ったという故事に倣い、魯山人も「その一食のために用意された清浄な箸」を重んじたのです。


日本の食文化と箸の関係


 箸は目立たない存在かもしれません。
けれども、食事の最初から最後まで人の手に寄り添い、料理と人とを結ぶ、もっとも身近な道具でもあります。
 だからこそ、消耗品である箸にこそ美しさと品質を求めることは、単なる贅沢ではなく、食そのものを大切にする心の表れである――その考え方は、今なお私たちの食文化に深い示唆を与えています。

宮内庁御用達 箸勝本店 謹言
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